「技能実習」法務大臣閣議後記者会見の概要

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2022年4月29日(金)に行われた古川法務大臣閣議後記者会見の概要をお伝えします。「技能実習制度」と「特定技能制度」の運用についての課題も提言されていますのでお伝えします。

今朝の閣議において、法務省案件はありませんでした。
続いて、私から「特定技能制度・技能実習制度に係る勉強会」について申し上げます。
 本年2月から「特定技能制度・技能実習制度に係る勉強会」を開催し、各界で御活躍されている有識者から、両制度に関する忌憚ない御意見を伺ってまいりました。
同勉強会においては、改めるべきところがあればしっかり改めるという考えの下、虚心坦懐に様々な御意見を伺い、来たる政府全体の本格的な検討につなげるべく、法務大臣として問題点の把握に努めてまいりました。
これまでの勉強会を通じて着実に議論が深まり、論点が浮かび上がってきましたので、一旦の区切りとして、私の所感を申し上げたいと思います。
まず、特定技能制度について申し上げます。
 同制度については、新型コロナウイルス感染症対策に伴う水際対策により、制度導入後の相当の期間、海外からの新規受入れが停止していたため、今後、受入れ正常化後のポストコロナ時代に向けて、運用状況の更なる把握・分析が必要であること、有望な外国人材が一貫したキャリアパスを描けるよう、特定技能1号人材の有効な確保策や、特定技能1号を終えた者が円滑に2号に移行できる環境の整備が求められていること、コロナ禍等大きな経済情勢の変化があった際に、より実態に即して対応できる受入れ見込み数の設定の在り方が求められること等が課題であるとの認識を持っています。
 なお、特定技能外国人の大都市への集中など、特定技能制度導入時に議論となった点については、現状、技能実習生からの移行が8割を占めるために大きく顕在化していない可能性もあり、予断を持つことなく引き続き注視していきたいと考えています。
次に、技能実習制度について申し上げます。
 同制度については、まずもって、人づくりによる国際貢献という技能実習制度の目的と、人手不足を補う労働力として扱っているという実態がかい離していること、実習生側、実習実施者側双方において事前情報が不足しているため、例えば、「聞いていたよりも賃金が低い」「聞いていたよりも能力が低い」等のミスマッチが生じている事例があること、実習生の日本語能力が不十分であるために職業上の指導やトラブル発生時の意思疎通に困難が生じている例があること、不当に高額な借金を背負って来日するために、不当な扱いを受けても相談・交渉等ができない実習生がいること、原則、転籍ができないとされているため、実習先で不当な扱いを受けても相談・交渉等ができない実習生がいること、構造的な問題もあり、監理団体による監理体制や相談・支援体制が十分機能していない事例があること、外国人技能実習機構の管理・支援体制に十分でない面があること等の問題点の御指摘があり、私としても、これらはもっともな御意見であると受け止めています。

今後、両制度の、特に技能実習制度の見直しを本格的に検討するに当たって、私としては、次の4点がポイントであると考えています。

第一に、政策目的・制度趣旨と運用実態にかい離のない、整合性のある分かりやすい仕組みであること。
第二に、人権が尊重される制度であること、実習実施者、実習生の双方が十分に情報を得て、自ら判断できる環境を整え、現行技能実習制度において、一部の実習先で生じているような人権侵害事案等が決して起こらないものとすること。
第三に、日本で働き、暮らすことにより、外国人本人の人生にとっても、また、我が国にとってもプラスとなるような右肩上がりの仕組みとし、関係者のいずれもが満足するものとすること。
第四に、今後の日本社会の在り方を展望し、その中で外国人の受入れと共生社会づくりがどうあるべきかを深く考え、その考えに沿った制度とすること。


いずれにしても、政府全体の本格的な検討に当たっては、これまでの外国人材受入れに関する政府方針を踏まえて、労働市場や産業構造の在り方のみならず、社会秩序の維持や地域格差、外国人の包摂の在り方等様々な観点から、日本社会の今後の在り方について議論がなされていくことと思います。法務省としても引き続き様々な方面の御意見を伺いつつ、着実に議論を深め、長年の課題を、歴史的決着に導きたいと考えています。

特定技能制度・技能実習制度に関する質疑について

特定技能・技能実習についてお尋ねします。先ほどの大臣の御発言の中で「着実に議論を深め、長年の課題を、歴史的決着に導きたい。」との力強いお言葉がありました。勉強会を終え、今後、本格的な検討のステップに進んでいくことになりますが、有識者会議の設置など、どのようなプロセスで進めていかれるか、また、今後のスケジュール感も教えてください。

私としては、官房長官と法務大臣が共同議長となっている「外国人材の受入れ・共生に関する関係閣僚会議」の下に有識者会議を設けて、様々な御意見を伺いながら、丁寧に議論を進めていきたいと考えています。
有識者会議の設置時期を含め、今後のスケジュール等については、関係省庁とも相談しながら決定していくことですから、現時点で具体的なお答えをすることは困難です。

技能実習制度の関係で、大臣から「制度の目的と実態がかい離している。」という発言がありましたが、これまでの勉強会で、大臣自身がどのようなところにそれをお感じになられたかということと、今後どのようにかい離を見直していきたいか、お伺いできますでしょうか。

私が感じたということではなく、そういう御意見があったということを、先ほど紹介させていただきました。大きな論点ですから、そういったことも含めて、今後も議論を深めていくということです。

特定技能と技能実習制度に対して、特に技能実習制度に対しては、厳しい賛否の意見があると思います。勉強会では具体的にどのような意見が出ましたでしょうか。また、勉強会を通じて、大臣自身がお考えを新たにしたことや、特に印象に残っている意見がありましたら教えていただけますでしょうか。

勉強会では、特に技能実習制度について大きく三つの意見があり、一つ目は、技能実習制度は技能だけでなく日本の文化や伝統なども学んで持ち帰り、母国で活躍している者もいることから、「制度を存続すべきである」という意見、二つ目は、制度が人材不足対策として利用されている実態を踏まえて「特定技能制度に寄せていくべき(一本化も含む。)」という意見、三つ目は、とにかく「制度を廃止すべき」という意見がありました。
私が特に印象に残っている意見は、「正面から労働者を受け入れる制度とすべく、特定技能制度に一本化を図るべき」という意見、両制度にとどまらず「技能実習から特定技能、技術・人文知識・国際業務といった高度人材までに至る一貫したシステムが必要ではないか」という意見、「低賃金で日本人のなり手のいない職場に外国人を受け入れるという発想を変えなければならない」という意見、「円安によるパラダイムシフトは重要であり、安かろう悪かろうではなく、日本で働くことの価値が高まるような制度設計が必要ではないか」という意見でした。

大臣の所感の最後のところで、「歴史的決着に導きたい」というお考えをおっしゃいましたが、もう少し具体的に「歴史的決着」という言葉の意味するものを教えていただけますか。

あらゆる制度について言えることですが、技能実習制度についても、創設当初においては、制度目的に沿った運用がなされていたと考えています。しかし、30年という長い時間の経過に伴い、制度の理念と実態のかい離が徐々に拡大したものと認識しています。
その結果、技能実習生にとっては、キャリアパスの描きづらい分かりにくい制度となってしまい、また、構造的に人権侵害が生じやすい制度となっていると考えています。
実際、これまでも労働関係法令違反や人権侵害事案が発生しており、累次にわたって適正化策を講じてきたものの、依然としてそのような事案が発生していることは極めて遺憾だと思っています。
私は、外国人との共生社会の実現は、歴史の本流であり、時代の要請であると考えており、これを実現するに当たっては、外国人の人権を尊重することはもとより、外国人がしっかりとキャリアパスを描けることが重要だと思います。
したがって、「長年の課題を、歴史的決着に導く」とは、こうした構造的な問題を正面から直視し、従前の累次の適正化策とは次元を異にした、制度の根本にあるべき哲学や思想をしっかりと据え直した制度づくり、すなわち、外国人の人権が守られ、また、理念と実態が整合した制度づくりを目指して取り組むという決意を申し上げたものです。

先ほど大臣は答弁で「理念と実態がしっかりと結び付いた制度づくり」といったことをおっしゃっていましたが、これは先ほどもありましたが、制度の例えば技能実習の統廃合など、御意見だけではなく、大臣のお考えの中にも、将来的に例えば技能実習法を廃止したり、特定技能の制度と一本化したりといったことを、今後の有識者会議の検討も含めて視野に入れるお考えという理解でよろしいでしょうか。

冒頭から申し上げていますように、虚心坦懐に様々な御意見を伺いながら、改めるべきものは改めるという誠意ある態度で、正面からこの問題を検証し、取り組んでいきたいということを、勉強会の設置に当たっても申し上げたと思います。今回、勉強会も一区切りがつきましたが、その中で様々な御意見を伺い、今日は大臣所感として私の受け止め方を紹介させていただきましたが、今後については、閣僚会議の下に有識者会議を設置してその中で更に具体的な検討を進めていただきたいと考えています。

入管法改正に関する質疑について

特定技能・技能実習は、外国人材の「入」に関する制度だと思いますが、一方で、送還など外国人の「出」の法整備、つまり外国人政策全体としての検討もやはり必要になると思います。改めて、前回廃案になった入管法改正の必要性について、今のお考えをお聞かせください。

前回廃案になりました入管法改正案については、入管の在り方については一体的な見直しが必要であるということを、機会あるごとに申し上げてきましたが、そのような考えに基づいて、やはり法整備が必要であるという考えを持っています。その考えに変わりはありません。
より具体的に申しますと、今の御質問の中の送還忌避問題は一つの課題としてあると思いますが、送還忌避問題が、退去強制を受ける者の収容が長期化してしまうという要因にもなっており、これも一つの解決しなければならない喫緊の課題だと認識しています。同時に、真に庇護を必要とする者を確実に保護する制度の整備もまた、重要な課題の一つです。こういうことは互いに連関している話ですから、様々な論点を含む制度を一体的に解決することによって、より良い入管制度の在り方を目指していくという考えは変わっていません。
入管法の改正については、申し上げているとおり、法整備の必要性を感じていますので、そのための検討を今進めています。具体的なことについては、今この時点で申し上げるタイミングではありませんが、非常に重要な課題だという考えを持っていますので、しっかりと検討を進めているところです。

「特定技能(2号)」への移行にも触れておりますので、今年度中には2号移行が可能な職種等も公表されるのではないでしょうか。

本日も最後まで読んでいただき、
ありがとうございます。

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